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ヒラタクワガタの交雑

季節がら、昆虫たちとはややご無沙汰で寂しいが、ミノムシの話を出したあと、ふとクワガタムシのことを思い出した。昨年に比較的話題になったかと思うが、ヒラタクワガタの外来種が帰化して、在来の日本固有種が危機に瀕しかねないという。

環境問題をあまり取り沙汰する気ではないのだが、いかんせん、この時代、こうした話ばかり目に付いてならないのは悲しいことだ。

日本のヒラタクワガタは、体長40~60mm程度(雄)と国内種としては大型のほうで、オオクワガタ・ミヤマクワガタ・ノコギリクワガタなどと比べると、一般的にはやや華々しくない。しかし、なかなか立派な体格をしていて、対馬産のものなどは70mmを越える体長があり、あのオオクワガタに勝るとも劣らないサイズのものもいて、なかなか魅力的。
なお、対馬ほか離島のものは、多様化し現在いくつかの亜種に分類されている。

外国種のヒラタクワガタの仲間では、南方に行くとかなり大型化し、スマトラオオヒラタなどは、110mmくらい(雄)にはなるだろうか、とにかく、国内種より断然大きくて気が荒い。
私たちが子供の頃は、こうした外国産のクワガタなど、図鑑の上か、博物館の標本でしかお目にかかったことはなかったが、近頃では、すぐそのへんのホームセンターなどで平気で売っている。しかも、たいした値段ではない。

しかし、爬虫類や鳥類がそうであるように、こうしたペットの一般普及があれば、必ずそれが故意や過失で外界に進出し、あたりまえのように帰化してしまったりする。
スマトラやタイ産の大型のヒラタクワガタの仲間も、既に国内種と交雑が起きており、昨年の夏ごろだったか、国内でサンプル採取したヒラタクワガタのうち、3%近い個体から外国産のもののDNAパターンが見つかったというような発表が、国立環境研究所からあって驚かされた。

生物は拡散・放散的に分化してゆく例が通常で、自然環境下では多様化の方向への一方通行ともいえるかもしれない。ヒラタクワガタもおそらく数十万・数百万年の単位で分化し、また、分化しつつあったのだろうが、人が介在してほんの数年程度で、まったく方向性を変え、すべての国内種が雑種となって行く将来もあり得るという可能性を考えると、少々恐ろしい気がしてくる。

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コメント

このような話は、決して国内外の種というWORLDなだけではなく、もっと狭い国内、いや、尾根挟んで隣の川ということでもあります。

岩魚や山女という渓流魚は、クワガタの話ほどでないまでも、何百年何千年というときを経て、その川で世代交代を繰り返し、その川における固有の特徴を持ちます。

ところが、漁協やボランティアでこのことを気にかけずに他の川の種を放流し、外来種がもともとの在来種を駆逐したり、交雑により在来種固有の特徴を失うということもおきています。

放流という行為事態を否定するわけではないのですが、自然に手を加える行為が、どれほど慎重にすべきことなのかを考えます。

話は広がってしまいますが、無知ということの罪、考えないということの罪、これらを認識する次第です。
またこれは、自然に対してだけでなく、人や仕事に対しても通じる話であり、自分の尺度、つまり自分の知識や経験だけでモノを見るのではなく、色々な尺度角度から見なければいけないことを、自らに戒める譬えでもあります。

投稿: しま | 2004.02.22 04:28

こんばんわ。

私も少し森林に関わっていますが、やはり環境問題はどうしたって考えてしまいます。ニュースで山や川や海が荒らされているのを見ると涙が出そうになることがあります。
外来種が在来種を駆逐してしまうのは、魚・虫に限ったことではなく植物にも見られます。(例えば西洋たんぽぽや外来種セイタカアワダチソウ)「持ち込む」・「手を加える」ということは(よきにつけ悪しきにつけ)大きな結果をもたらすので、よくよく考えないといけないなとしみじみ思います。

投稿: 葉兎 | 2004.02.22 20:17

しまさん
おっしゃるとおりのことと感じています。
自然保護を訴える団体でも、「保護」の本当の意味を会員内で何度も話し合って、いつのまにか方向がずれていったりすることのないようしていただきたい部分が、少なからずあるように思われます。
私の身近なところで、公園周辺の植生を保全するという趣旨の活動を最近耳にしました。従前は、種別なく雑草の全てを刈り取っていたところを、季節を感じさせる植物だけは残すよう働きかけ、実際そのような措置を取れるようになったということです。
これが、悪いことだとはいうつもりはありません。ただ、それは、自然保護とはいえず、単に人の好みの庭を造る園芸に過ぎないのではあるまいかと、余計なことかもしれませんが思う次第。

葉兎さん
植物は、本来、昆虫などよりずっと放散の速度が遅いわけですから、より人間の功罪が顕著ですね。
実際、おしゃられるように、もはや外来種しかめったにお目にかかれない種類の植物が、我々の身の回りには山のように・・・
一人一人の認識を確かなものにしてゆきたいですね。
ただ、それ以前の低レベルな部分。金銭のためにそれを犯す、そして、そうしたことにまったく価値観を持たない人間の衰退を願いたいところです。

投稿: 代官 | 2004.02.22 21:55

はじめまして。記事を興味深く拝見しました。
安易な輸入で在来種のクワガタが消えてしまわないと良いのですが、、、
そういえばアメリカザリガニが日本に初めて持ち込まれた地にはその記念碑が
あると聞いたことがあります。当時は在来種への影響といった知識がなかった
かもしれませんが、現在もそういった記念碑があるとしたらちょっと驚きです。

投稿: flask | 2004.07.08 20:38

flaskさん、こんばんは
興味深い分野を、いろいろと掘り下げておられるのですね。
今日、たまたま帰化生物に関係する記事を、通勤電車で書いていたら、このコメント!この記事の存在も忘れかけていたのに、ちょっとした偶然に驚いてます。

投稿: 代官 | 2004.07.09 00:07

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