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雪迎え

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~蜘蛛と風…~

晩秋・・・初夏にもたぶんあると思う。あまり知られてはいないが、透けるような糸が風に乗って舞う「雪迎え」という現象がある。
たしか、主に山形方面で使われることばと聞いているが、「雪送り」ともいわれる。これが見られる時期、雪が降る前ぶれや後の風に乗って現れることから、そう呼ばれるらしい。

この現象は、英語でも「ゴサマー」(gossamer=goose summer=ガチョウの夏)と呼ばれ、「エンジェル・ヘアー」というもっとロマンある言葉もある。

この「雪迎え」という幻想的な想像を掻き立てられる現象、実は、生まれて間もない幼蜘蛛の繁殖方法であり、小さな蜘蛛が長い糸を出して風に乗り、これをなびかせて繁殖地を広げてゆく生態である。
誰もが知っているタンポポの種のように、蜘蛛が広い範囲にその生息域を広げてゆく手段として、風というものを利用しているのである。

他にも呼び名があり、「遊糸(ゆうし)」というのは中国語源であり、”かげろう”ともいう(「かげろう」については、次の機会にでも話したい)。
また、伊豆地方で「白ばんば」といえば、井上靖の「しろばんば」※が有名で、一義には雪虫(トドノオオワタムシというアブラムシ科の昆虫のこと)を指すようだが、この蜘蛛の糸のことも「白ばんば」というらしい。

かなり多くの種類のクモにこの生態があるようには聞いているが、実際には滅多に見られるものではない。日中の小春日和から、夕方に風が吹き始めるような11~12月ごろにそのチャンスがあるようだが、今年、まだ一度もその光景を目にすることはなかった。現象の実体だけ捉えれば他愛ないことではあるかもしれないけれど、なんとも夢多い現象であり、心引かれる名前ではないだろうか。

※文学に詳しくない私には、それが雪虫のことか、蜘蛛の糸のことかわからない。

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コメント

雪迎えになって空を飛んでゆく蜘蛛は、「幼蜘蛛」ではありません。亜成体ないし成体の蜘蛛です。念のため。『飛行蜘蛛』(笠間書院)、『雪迎え』(三省堂新書、絶版)に詳しく書いてあります。幼い蜘蛛というのは、某亜小説家のあやまりです。

投稿: 錦 仁 | 2008.02.25 14:25

錦さん、コメントありがとうございます。
雪迎えになって空を飛んでゆく蜘蛛は、「幼蜘蛛」ではないということですが、正確には「多くは小型の蜘蛛の子蜘蛛」であり「成体でも飛ぶ種がある」なのではないでしょうか。
世界中では二十数科の蜘蛛に観察される生態で、日本では、カニグモ科やフクログモ科など歩き回って巣は張らない仲間やヒメグモ科、サラグモ科などで見られるようですね。一般には飛ぶのはやはり子蜘蛛が多いようで、サラグモ科では、成体がよく飛ぶらしいですが、それほどに詳しいことは分かりません。
やはり、生の観察が重要ですね。正直なところ、かつて読んだ記述の記憶もあいまいで、今、手元にあるものでは図鑑、百科あたりの情報くらいしかありません。
私は本文にも書いてありますように、文学は苦手でして(わざわざそのようなことをここに書いてあった自分に笑ってしまいました。)、ほとんど小説などを読みませんので、その方面でどう扱われているのか、誰がどう間違ったかなどに至っては、さっぱり分かりません。

投稿: 代官 | 2008.02.25 23:09

今の今まで<雪迎え>という言葉も知りませんでしたが、秋から初冬にかけて中央アルプスの縦走路(鞍部)でこのような光景が見られます。不思議な事にそのほとんどが丸い糸の輪で、肉眼でもはっきりと分るくらいの大きな蜘蛛が、3000メートル近いアルプスの上空を、伊那の谷から木曽の谷へと越えて行くんです
家から近いところなので、いつか撮影にチャレンジしようと思っています

投稿: su- | 2010.09.02 16:26

su-さん、コメントありがとうございます。
中央アルプスの稜線を、丸い糸の輪に乗り、伊那谷から木曽谷へ越えて行くクモ。すばらしい光景でしょうね。私もぜひ見てみたいものです。
もし撮影できたなら、是非教えてくださいね。

投稿: 代官 | 2010.09.02 23:08

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