貝殻の記憶~風の音色4~
貝殻を耳にあてると聞こえてくるかすかな音。貝が昔、海の底に住んでいたときの波の音が、この中にずっと残っている・・・
誰に教わったか、子供の時分にこんな風に聞いたことがなかろうか。
貝殻に音が記録され、常に再生されているはずもないだろうが、耳にあてれば確かに波の音はする。巻貝の妖しい螺旋の不思議もあって、本当にそうだとは思えないまでも、ちょっとそう信じたくなったものだった。
地元の海岸でよく転がっているこのツメタガイ。二枚貝のあの堅い殻を溶かして突き破り、中身を頂いてしまうという、ちょっと怖いところもある巻貝だけれど、貝殻と成り果てて、浜辺にコロリと転がった姿は可愛らしいものだ。
よく耳にあてたのは、この貝殻だった。かすかに波の打ち寄せる音がした。
また、サザエの貝殻を耳にあてたとき、これは、さすがに岩と波のぶつかり合う激しい海に育った貝だな、そう思わせる音に感動し、まぶたの裏には、荒磯の情景が浮かんだものだ。
けれど、貝殻に記憶された遠い昔の波の音は、風の音。
今、その時、自分の肌をの周りを通り抜けていく空気の流れを貝殻が拾う音。
山から掘り出した貝の化石に耳をあて、数千年、数万年の昔の海の音が聞いてみたかった。
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