八重山を歩く(1) ヤエヤマヤシ
例年どおりなら、既に雨季に入っているはずなのであるが、幸いにして雲一つなく、太陽のまぶしい初夏の石垣島を訪ねた。
椰子の群落へ向かう。群落というよりは、一つの山である。島周回の幹線路を外れると、すぐにそれらしき独特の雰囲気を周辺に漂わせた山が見えてくる。しかし、その、少しの怖れと大きな期待を感じさせる雰囲気を、何と言ったらいいだろうか、そこだけは、いまだ中生代が残されているかのような、ロストワールド的な香りがするのである。
ヤエヤマヤシの群落内を歩いてみた。植生は、いつもの見なれた温帯の落葉樹林とは当然まったく違うものであるし、温暖地の照葉樹林とも違っていて、まるでジャングルである。
ヤエヤマヤシは、この石垣島と西表島に限定分布するヤシで、分類上、一属一種という、この八重山で独自の進化をしてきた希少な種であるという。なんでも、海を隔てながらも比較的近隣にあるフィリピンや台湾に自生するヤシよりも、むしろ、遠く離れたニューギニアのヤシに近縁であるらしい。そうすると、かつて波に揺られて海を渡り、漂着した後に大地に根を下ろした椰子の実は、かのニューギニアの浜辺でこぼれ落ちたそれだったということであろうか。
そういえば、石垣の市街地にある博物館には、南の海の遥か向こうにある、あちらこちらの島々から漂着したという、木をくりぬいて造られた、いつの時代のものとも知れぬ小舟がいくつも展示してあった。
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