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八重山を歩く(4) 八重山の蝶

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~最も目についたスジグロカバマダラ~

石垣島には、いたるところで蝶が舞っていた。大きめで、かつ、活発に飛んでいる

日本の生物の地理的な分類上において、鹿児島と屋久島の間又は屋久島の南のトカラ海峡とには重要な境界がある。前者を三宅線、後者を渡瀬線と呼び、ここを境に南北では生息する生物の種の構成に大きな差があって、昆虫では主に三宅線を境界とし、他の多くの生物では渡瀬線が適用されることが多い。

爬虫類や両生類などは、移動能力がかなり乏しいので、海という地理的な障害が持つ意味は計り知れないことは言うに及ばないが、飛翔力を持ち、移動能力と繁殖力に優れた昆虫や鳥類の仲間にして、そのような境界が認められるのだからなかなか興味深い。

さて、その三宅線又渡瀬線より南の琉球列島(南西諸島)は、世界的な視野で生物をみたときの地理的分類区としては東洋区と呼ばれ、熱帯系の生物層が顕著であるが、そこに住む蝶もまた、ふだん関東周辺にいたのでは、まず見かけることはない熱帯系の蝶たちで、色彩や姿の優雅さと珍しさを楽しませてくれる。

石垣島に訪れたのは5月初旬で、特に目だったのは、マダラチョウの仲間だった。マダラチョウといえば、いつも出かける林道でも、アサギマダラの姿は見ることができるが、本土でみられるマダラチョウはそれくらいであり、八重山には定着しているものだけでも6種のマダラチョウの仲間がいるようである。

マダラチョウの仲間は、ふわふわと綿のように軽く、とても優雅な翔び方をしていて、見ているこちらをおおらかな気持ちにさせてくれる。翅の形状がすっきりと整ったものであるためか、それほど大型の蝶という印象はないが、実際にはアゲハの仲間と同じくらい大きい種が多く、軽やかに林間を翔んでいる様はよく目立つ。

ところが、マダラチョウの仲間が目立つ上にゆったりのんびりと翔んでいても、鳥などの捕食者に襲われることはあまりない。それは、この蝶の仲間は植物から採り込んだ毒の成分だけを体内に蓄積させていて、食べるとひどくマズイという記憶を鳥たちに植えつけることに成功したからだという。

なるほどと思うかもしれないが、絶対的な正解と、簡単には決めつけない方が無難かもしれない。体内の毒の蓄積までは実証できるが、一方の捕食者の方となると、一個体がそのマズイという記憶を生涯持つことも確実とはいえないが、それ以上に、このような体験から獲得した記憶が、文化のない生物において次世代へ伝えられる仕組みがあるのかないのか不明である。現在のところ、こういった後天的に獲得された事項は遺伝には馴染まないのであるから。

生物の不思議な部分はあまりに多くて、そのほとんどには、推定的な正解しかまだ用意されていない。
(つづく)

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コメント

>それ以上に、このような体験から獲得した>記憶が、文化のない生物において次世代へ>伝えられる仕組みがあるのかないのか不明>である。

マダラチョウの味の悪さに対する鳥の学習や記憶は遺伝しないと考えられています。個々の鳥が体験や観察を通して、マダラチョウの味の悪さを学習し、記憶し、避けるようになるのです。

投稿: 常識人 | 2009.12.28 22:26

常識人さん、コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、マダラチョウに限らず、生物個体が学習や記憶した獲得形質は遺伝しないという立場が今日の進化論であり、遺伝学の常識です。ここでは、それを十分に承知した上で、実はその常識に対して、疑問を呈したつもりです。はっきり書くと角が立つのでそうは読めないように書きました。
個別に確認できる現象の上では、獲得形質の遺伝を肯定できないのにもかかわらず、マクロ視点での実態は、生物が獲得したものを次代以降に伝えているように見える部分の説明が困難であるからです。生物の進化については、現在の進化論ではまだまだ役不足と感じています。なにか、また読みきれていないものがあると思うのです。

投稿: 代官 | 2009.12.29 09:36

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