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夏のスミレの花

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~密かに付ける閉鎖花~

春の野や林床で、可憐な花を咲かせるスミレは、自分としては春の象徴の一つであり、その大きさ、姿勢、色ともに程よく好みであって、最も好きな花の一つでもある。

早春の、まだ草木に色が乏しい時期から、緑の葉と白~薄青~紫系統の花で野歩きの目を楽しませてくれるスミレだが、花が終わり、やがて、周囲の草花も芽を吹き、勢いを増して、新緑の季節ともなれば、いつしかその姿を目にしなくなくなってしまい、また花を咲かせる来春まで意識の奥にしまい込まれてしまう。

では、スミレは、春に花開き、その後は残った葉、茎ともに初夏までのうちにはなくなって、地中に姿を消してしまうスプリングエフェメラルの一種なのかというと、そんなことはない。
青々と繁った草の下で、ひっそりとした時を過ごしているのである。

そして、その時期のスミレは、他の草の緑色に隠れているから気付かないだけで、実は花さえ付けているということは、あまり知られていないのではなかろうか。

そうはいっても、夏の鬱蒼とした雑草の下に、可憐な薄紫のスミレが咲いているところなど見たことはないと思う。花を付けるといっても、あの春のような花を開くわけではないからである。

夏のスミレは花は付けるが、その花は開かない花である。閉鎖花といって、つぼみのような状態のまま、閉鎖された花の中で自家受粉しているのである。つまりスミレは、他の株から新たな遺伝子を取り込むのは春だけにし、夏はひたすら遺伝子はそのまま増殖あるのみという方式を採用しているわけであり、それはそれで効率がよいのかもしれない。

このスミレの閉鎖花を見つけるには、やはり、春のうちにスミレが咲いていた場所を記憶しておいて、他の草が繁ってからその場所をよく捜してみるのが手っ取り早い。

そこには、本当にひっそりと、地味な薄緑色の閉鎖花を付けたスミレが花を付けて人知れず暮らしているはずである。

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八重山を歩く(8) ハイビスカス

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~島じゅうこの花で溢れている~

情熱的な赤が南国らしさを演出し、いやおうなく、トロピカルな環境の真っ只中にいることを認識させてくれるこのハイビスカス。

空の青、海の青との対比が素晴らしく、
熱帯植物園などの人工的環境で局所的に育成されているのとは違って、そこかしこの路地など、どこでも見かけることができ、周辺環境としっかりとした一体感を持って咲いていた。

このハイビスカス、標準和名で正式にはブッソウゲ(仏桑花や扶桑花などと書く)といい、ハイ・リゾートな雰囲気から急にイメージが変わるが、身近な芙蓉などと同じ仲間の花であるし、ハイビスカスというのは、芙蓉の仲間の総称であるらしく、よく見てみれば、フヨウやムクゲと同じ仲間の花であることはよく分かる。とはいえ、やはり、現地で珊瑚礁の明るく青い海をバックに赤々としたハイビスカスを見ると、ブッソウゲの名が少々の違和感を持つことは拭えない。

原産地はよくわかってはいないようだが、どうも、アフリカ系、東南アジア系の芙蓉の雑種であるかインド洋の島原産というのが有力なようである。おそらく、一般にはハワイやグアムといった太平洋の島のイメージが強いのではないかとも思われるが、それらの島にも、そして八重山にも、後に渡ってきたものであって、どちらが本場ということもないようである。

いずれにしても、南国らしい南国の花であることには間違いない。

※8話続けたこの「八重山を歩く」は、ここでひとまず終了しておきます。

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八重山を歩く(7) 南十字星

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~港の星はよく見えたけれど・・・~

珊瑚礁に囲まれて波静かな渚は、波の音さえほとんどしない。もちろん、実際には、いろいろな音が聞こえているが、なにぶん、常時において波は荒く風の強い九十九里の海を見なれて育っている自分には、そのレベルはもはや無音にさえ感じる。

日が落ちて、静かな渚に闇が降りても独特の雰囲気がある。そして、見上げれば星空の様子が違う。星空が違うといえば、人里離れた地や山でときおり出あうことのある、信じられないほどの数の星が見える暗い空も確かに見慣れたものと大きく違うのであるが、この南に遠く離れた島では、星の見える位置そのものがかなり違うことに驚かされる。

北半球では、初めから天の北極まで見えているから、北に行った場合には、たとえどんなに北に行っても、自分の住まいから見ることのない星が、新たに見えるようにはならないが、逆に南に行った場合には、南に行った分だけ、天の南極に近い星が見えるようになってくる。

石垣島は、日本の最南端に近い緯度にある。自分の住まいからでは南の地平線の向こうから絶対に顔を出すことのなかった星達が、ここでなら見えるというのは魅力である。

さて、実際の星空の方はどうだったかといえば、南十字座の4つの星、ケンタウルス座のα星とβ星といった、南の星空でも特に代表的な星達が、この時期の宵に観望の好機となる。

そして、石垣滞在中は、日中の間ずっと雲一つないような晴天ではあった。そうなれば、これはもう、さぞかしキレイな星空が見えてもよさそうであるが、現実は、そんなに甘くない。

晴天のように見える青空は、実際には、空全体に薄っすらと雲が掛かったようなかなり霞んだ空であったため、太陽はともかく、星の見え加減には大きな影響があった。

霞空では空の低いところほど光が通らない。いくら、石垣が南にあるとはいっても、前記のように本土では見れない星々の高度はかなり南に低く、その霞んだ低空に、南十字星の姿を見つけることは残念ながらかなわなかった。

八重山は、平年なら雨季である。せっかくの晴天なので、夕日が海に沈むのを見に行ったのだが、太陽でさえも、雲はないのに水平線に達する前に光が届かなくなってしまうくらいの透明度であったから、低空に星が見えなかったとしてもしかたあるまい。

このようなわけで、星空の方は、いつもとは少々位置が変わって見える馴染みある星々が天頂付近に見えたのがせいぜいで、かなりいいところまで条件が揃いつつも、南の星との出会いは、今一歩で果たせなかったのは残念だった。
(つづく)

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八重山を歩く(6) 珊瑚礁と津波石

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~珊瑚礁を望む海岸に点在する大石~

石垣島といえば、やはり島を取り巻く珊瑚礁の海であり、島の周囲をひととおり見て回った。さすがに海の色はすばらしい。その深度による蒼のグラデュエーションの妙は、自分の地元の海では絶対に味わうことのできないものである。
岩礁は概ね古い珊瑚礁の隆起したもの、砂浜の砂は鉱物ではなく珊瑚や貝などが細かく砕けた生物質のものがほとんどである。

珊瑚礁は、海に入らなければ素晴らしい姿が見えてこないのであるが、今回は残念ながらそのような時間はなく、水際から、遠く外礁に砕ける白波や、波のないエメラルドの礁湖を眺めるだけであった。

石垣で訪れた海岸の一つに白保の海岸があるが、この海岸の珊瑚は特に美しいとされる。しかし、ここに訪れて自分の目を特に引き付けたのは、海の中のものに対してではなかった。

この海岸は、珊瑚礁由来の石灰石でできた広く平坦な岩浜であるが、この海岸のところどころに高さ2~3m程度の大石がゴロリと転がっている。その石自体は、おそらく古い珊瑚で出来たものと思われるし、海岸に大石があるからといっても、それだけではごく普通のことにすぎない。

しかし、まっ平な石灰岩盤上にある大石は、その石灰岩盤とは繋がっているわけでなく、また、その質も少々違うように見え、上下の関連性はないようである。みたところ、どう考えても、海岸が形成された後で、どこか別の場所から運ばれてきたものというほかなく、それもよく見るとあたり一帯に数限りなく黒っぽく見える大石が転がっていて、その景観は私には奇怪きわまりなく見えた。

初めは、この一帯の海が、普段は珊瑚の外礁に守られ、著しく静かな海であるとしても、南の島のことであるから、さぞかし台風はすさまじく、その波浪が運んできた石であろうかとも考えた。しかし、いくら台風がすさまじくても、台風の波浪で運ぶ石にしては少々大きすぎやしないかと思われた。

では、もともとあった岩石の特に硬質な部分だけが残ったものであるのか。あまり現実的ではないものの、そういう考えも浮かぶが、やはり、石自体がどこか別の場所から来ているように見える。

そして、もう一つの原因として考えられるものとして、その頻度は低いものの、ひとたび発生したならば、このような石を運ぶ力を十分に持つ現象がある。そう、想像を超える水の流れを発生させる津波である。

そして、この話は気になっていたので、後日、帰宅してから調べると、なるほど大きな津波が過去にあったということがわかった。それも飛び切りでかいやつである。1771年と時代はだいぶ遡るが明和の大津波とも八重地震津波ともいわれる津波で、なんと高さが50mから場所によって90m近いという、想像を絶する日本最大の津波の記録である。

現地では気付かなかったが、海岸よりもずっと内陸の高台に、この津波で打ち上げられたという更に大きな「津波石」と呼ばれる石があるらしい。また、石垣島の東側海岸はこの津波で壊滅的な被害があったということである。

海岸に点在する・・・いや、点在というにはあまりに多い奇異な大石は、おそらく、その津波石と同様の原因でそこにあるのではなかろうか。
絶対的な正解かどうかは判らないが、現地で不思議に思った謎がひとまず解けてすっきりした。
(つづく)

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