八重山を歩く(6) 珊瑚礁と津波石
石垣島といえば、やはり島を取り巻く珊瑚礁の海であり、島の周囲をひととおり見て回った。さすがに海の色はすばらしい。その深度による蒼のグラデュエーションの妙は、自分の地元の海では絶対に味わうことのできないものである。
岩礁は概ね古い珊瑚礁の隆起したもの、砂浜の砂は鉱物ではなく珊瑚や貝などが細かく砕けた生物質のものがほとんどである。
珊瑚礁は、海に入らなければ素晴らしい姿が見えてこないのであるが、今回は残念ながらそのような時間はなく、水際から、遠く外礁に砕ける白波や、波のないエメラルドの礁湖を眺めるだけであった。
石垣で訪れた海岸の一つに白保の海岸があるが、この海岸の珊瑚は特に美しいとされる。しかし、ここに訪れて自分の目を特に引き付けたのは、海の中のものに対してではなかった。
この海岸は、珊瑚礁由来の石灰石でできた広く平坦な岩浜であるが、この海岸のところどころに高さ2~3m程度の大石がゴロリと転がっている。その石自体は、おそらく古い珊瑚で出来たものと思われるし、海岸に大石があるからといっても、それだけではごく普通のことにすぎない。
しかし、まっ平な石灰岩盤上にある大石は、その石灰岩盤とは繋がっているわけでなく、また、その質も少々違うように見え、上下の関連性はないようである。みたところ、どう考えても、海岸が形成された後で、どこか別の場所から運ばれてきたものというほかなく、それもよく見るとあたり一帯に数限りなく黒っぽく見える大石が転がっていて、その景観は私には奇怪きわまりなく見えた。
初めは、この一帯の海が、普段は珊瑚の外礁に守られ、著しく静かな海であるとしても、南の島のことであるから、さぞかし台風はすさまじく、その波浪が運んできた石であろうかとも考えた。しかし、いくら台風がすさまじくても、台風の波浪で運ぶ石にしては少々大きすぎやしないかと思われた。
では、もともとあった岩石の特に硬質な部分だけが残ったものであるのか。あまり現実的ではないものの、そういう考えも浮かぶが、やはり、石自体がどこか別の場所から来ているように見える。
そして、もう一つの原因として考えられるものとして、その頻度は低いものの、ひとたび発生したならば、このような石を運ぶ力を十分に持つ現象がある。そう、想像を超える水の流れを発生させる津波である。
そして、この話は気になっていたので、後日、帰宅してから調べると、なるほど大きな津波が過去にあったということがわかった。それも飛び切りでかいやつである。1771年と時代はだいぶ遡るが明和の大津波とも八重地震津波ともいわれる津波で、なんと高さが50mから場所によって90m近いという、想像を絶する日本最大の津波の記録である。
現地では気付かなかったが、海岸よりもずっと内陸の高台に、この津波で打ち上げられたという更に大きな「津波石」と呼ばれる石があるらしい。また、石垣島の東側海岸はこの津波で壊滅的な被害があったということである。
海岸に点在する・・・いや、点在というにはあまりに多い奇異な大石は、おそらく、その津波石と同様の原因でそこにあるのではなかろうか。
絶対的な正解かどうかは判らないが、現地で不思議に思った謎がひとまず解けてすっきりした。
(つづく)
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