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構造色

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~微小構造が生む不思議な色~

沢沿いを歩いていると、キラキラとまぶしい水面の反射のなかにひらひらと翔ぶ昆虫のシルエットが目に映った。

ひらひらとした翅の動きはまるで蝶のようであるが、飛翔軌跡は蝶とは違い線形的であり、そのシルエットがトンボのものであるとわかる。翅の大部分は黒っぽく色が付き、後翅だけが、トンボとしてはやけに幅広く、対して、胴は短い。
比較的、自然の保存度が高い川に住むチョウトンボである。

子供の頃の私の家は、平地の住宅地の真ん中にあり、多様な生き物との触れあいの場としては、せいぜい住宅地周辺の、遠からず埋め立てられてしまうであろう田んぼが残っていた程度で、チョウトンボを見ることはなかったから、たまに山際にあった父の生家に遊びにいった時には、よく、裏手の小川でこのトンボの姿を追ったものであった。

チョウトンボの翅の色はといえば黒なのだが、同様に黒い翅をもつカラスアゲハなどとも共通する美しい翅の輝きを持っている。見る角度によって青や緑の金属光沢を放つこの色彩は、構造色といって翅そのものの色ではない。

昆虫には、ほかにもタマムシやコムラサキなどのように、見る角度で美しい光沢を見せるものたちがいる。CDやDVDなどの、オプティカル・ディスクに見られるあの虹のような色彩もこれと同種であるのだが、翅がもつ微小な構造が起こす光の回折と干渉によって生みだされた色彩である。

光は、波の性格と粒子の性格を併せ持ったような進み方をする。一般的には直進的で理解しやすい粒子っぽい性格が現れているように見えるが、ときに回折や干渉といった波動ならではの進み方も見せる。

小さな穴を光が通りぬけると、粒子の性格だけならば、穴を抜けた粒子だけが、そのまままっすぐ進むところであるのに、ここで、波の性格が出て、穴を抜けたあとの光は、そこから広がるように進む。小さな構造物からの反射でも同じ事が起こり、これらを「回折」という。また、波でもある複数の光が、互いに重なって強めあうことや、逆に打ち消しあうこともあって、それを「干渉」という。

それらの光の性質をここで詳しく述べるつもりはないのであるが、ともかく、チョウトンボの翅にある無数の微小な凹凸の構造によって、反射光が回折と干渉によって、一定の方向から見ると、特定の波長の光だけが集まって強められ、あの青い光沢を見せるのである。

では、はたしてそのような微小な構造をなして、こういった色彩を発することの意味はなんであるのか。なぜ、このような構造を形作るに至ったのか。このへんが、生物の最も不思議な部分であるのだが、もちろんその答えは用意できない。

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