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昆虫病原糸状菌

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~一見りっぱなショウリョウバッタであるが~

この夏は、国内最高気温の記録が更新されるなど、ひところに限っていえば大変に暑かったのであるが、夏といえる期間そのものは少々短かった。9月に入ったが、8月の終わりから早くも秋霖ともいえるぐずついた天候が続いている。

さて、この時期に野を歩くと、まず目に付くのが赤く染まった赤とんぼ達、そして、足元からぱっと飛び立ってゆくバッタ達の姿である。トノサマバッタやクルマバッタの飛翔はよく目立つ。

カメラを持ってそっと彼らに近付くが、そこは個体によって千差万別、ドアップで撮らせてくれるサービス満点の被写体もいれば、近寄る隙もなくぱっと飛び去ってしまうものもいる。こちらとしては捕獲の意思など毛頭ないからじっとしていてもらいたいが、彼らにはそんなことはお構いなしで、逃げてしまうのが一番リスクがないのだろう。まあ、これは一般にはそうだということであって、今日などは、クルマバッタが目の前から飛び立ったばかりに、すぐに蜘蛛の巣に引っかかり、あっという間にぐるぐる巻きにされてしまったなんてこともあり、ちょっと気の毒であったが、自然界、どこで死と隣り合わせているかは判らないものであるということを、改めて感じた。

ところで、草むらをよく観察しながら歩いていると、たまに草のてっぺんの方にとまっていて、なかなか撮影しやすそうなバッタが目にとまる。そして、そのバッタにそっと近付きカメラを構えるが、どうも様子がおかしいことに気がつく。

草にしっかりつかまっている割には、なんだか生気がない。いや、よく見ると、生気がないのではなくて既に死んでいるのである。通常に考えたら、生き物はこういう死に方はしないものであるが、実はこのように死してなお草にしがみつくバッタの死骸は少なくない。どうやら、昆虫病原糸状菌に侵された個体であると思われる。

バッタにこのような死に様をもたらす原因の菌は、エントモファガ・グリリという糸状菌であり、この菌に侵されると、バッタは草に登り高い位置でしっかり草の茎につかまったままの形で息絶えるようである。そして、その高い位置からは、また、その糸状菌の胞子が、他のバッタを求めてばら撒かれるということになるらしい。

この菌が宿主のバッタにどんな作用を与えることによって、そのバッタが力尽きて地に落ち朽ちるのではなく、草を登りしっかりそこにしがみつくように仕向けるのだろうか、たいへんに不思議なことではあるが、だいぶ涼しい風も吹くようになってきた初秋の野では、あまり人目に触れることもなく、そんなことも起こっているのである。

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