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アウトリガー付きの漁船

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~南の島の異形の船~

先月のことであるが、八丈島を訪れた。

島は例年あまり天候の良くない頃である。天気予報の動向を見ながら、足止め覚悟で訪れた島は、幸いにして訪問時に限っては、本当に穏かな天候に恵まれた。

とはいえ、到着時にはまだ前日までの荒れ模様の気配が残っていた。聞けば、前日の飛行機は全便が欠航で、船などはここ数日間というもの来ていないという。自分たちが乗った飛行機も、羽田を出る時点では、まだ、到着できるのか、羽田引き返しとなるのかが、正直なところおぼつかない様子の航空会社側の案内だった。

そんな状況の中で着いた八丈島だが、島に着いて向かった海は、確かにまだまだ荒れていた。この日も本土からの船は港に着けないようである。

人気がなく閑静な漁港へ足を止め、海の様子をうかがった。確かに押し寄せる波は大きいが、地元房総で育った身である。時化の海を知らないわけではない。ただ、その荒れた波の大きさは、「何か変わった漂流物でも落ちてないかなあ」と台風の直後に訪れる時の、最高潮に荒れた地元の海のそれ並のレベルであった。

そして何よりも、見渡す限りの波浪の海は、まるで、この島自体が大海原に漂流する小さな船であるかのように、ゆっくり大きくうねっているようにも感じられた。

ところで、そんな海の迫力をしばらく眺めた後で、漁港内に陸揚げされた漁船を見かけた。しかし、初めに視界に入ったとき、すぐさまそれが漁船とは気付かなかった。なにしろ、その船には南太平洋などで使われて発展したカヌーの一種、アウトリガー・カヌーよろしく、アウトリガーを備えていたのである。

大きなカヌーかと思ってよく見ると、紛れもなく小型の漁船であった。しかも、その場に居並んでいる他の小型漁船を良く見れば、みなアウトリガーが付いているではないか。
こんな漁船風景は見た記憶がなかった。

船の本体の片側に、浮力体を張り出したシングル・アウトリガーの船体は、本船がそちら側へ倒れる方向に力が加わったとき、その浮力で抵抗し、本船がその逆側へ倒れる方向に力が加わったときは、その重量で抵抗するという仕組みにより、巧みに船体全体を安定させる。

私も、湖の静水でほんの遊び程度にカナディアン・カヌーに乗るのだが、その実、水が苦手なので、内心、カヌーにアウトリガーを付けたいくらいに思っている。

見渡す限りの怒涛の海原を見た直後である。風が吹きぬけ波浪に洗われることの多いこの島の風土には、きっと漁船にも船体を制御する上でアウトリガーが必要なのだろう。特殊な形状の漁船を突然目の前にしたが、この島の風土を思えば、すんなりとそう理解するほかなかった。

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